
「中央公論」1月号を編集部からいただいた。
日頃あまり縁のない雑誌だが、「司馬遼太郎と日本人の物語」という対談など面白そうな記事もある。
とくに興味をそそられたのが表題の企画。
13人の識者が自分の専門分野からそれぞれ10冊ずつを推薦・紹介するというものである。テーマと識者は以下の通り。
日本国家の成り立ち 遠山美都男
天皇の歴史 今谷 明
貴族と武士の盛衰 本郷和人
戦国時代の実像 小和田哲男
江戸の爛熟 氏家幹人
ひと味ちがう明治維新 三谷 博
戦前の政党政治 村井良太
「あの戦争」を知る 保阪正康
戦国日本の歩み 猪木武徳
日中関係の二千年 加藤 徹
思想していた日本人 苅部 直
歴史小説の楽しみ 細谷正充個人的に面白かったのを二、三挙げてみる。
まずは
本郷和人氏である。彼の文章はほかでも読んだことがあるが、とくに一般向けの概説が面白い。とにかくユーモアがある。多少楽屋落ちネタだが、自分を自虐的に肴にしたかと思うと、論敵を寸鉄人を殺すような一言でチクリというスタンス。歴史をわかりやすく語ってくれるという意味では恰好の指南役である。
明治維新については、
三谷博氏を評者に選んだのは編集部の卓見といえるかもしれない。小説『山の民』まで紹介してあったのにはびっくりした。たしかにこれは名著である。
あと、
苅部直氏は若手の気鋭の研究者。前田勉『兵学と朱子学・蘭学・国学』(平凡社選書)を紹介していたから思い出した。この本を新聞広告で見て買おうと思って忘れていたことを。だから、速攻で購入した。「近世の支配思想は兵学である」というコンセプトは、儒学第一主義をとる通説への強烈なアンチである。タイトルの四つの学問のあらましをコンパクトに理解できるからお勧めである。
そして、私の守備範囲に一番重なる
小和田哲男氏の記事。いつぞや当ブログで紹介した黒田基樹『百姓から見た戦国大名』を入れるなど目配りが効いているが、信長関係、本能寺の変関係の紹介には少し鼻白んだ。
「これまでの主流的な考え方だった怨恨説は、最近の研究では後景に追いやられ、むしろ近年は、明智光秀単独ではなく、黒幕が存在したのではないかという説が有力視されているように思われる」
この概括にはちょっと納得できないな。黒幕説の代表ともいえる朝廷黒幕説を唱える論者は現在一人もいない。それなのに、なぜ黒幕説が有力視されているといえるのか。小和田氏には拙著も贈ってあるんだけど(爆)。
まあ、最近、黒幕ものが小説も含めて相次いで出版されている状況に規定されてのものかもしれない。むしろ、こちらの力不足に思いを致すべきかもしれない。小和田氏にさえ研究状況がそのように見えているということは、一般の歴史ファンにはもっとそうだろうと思われるからだ。