膏肓記

歴史作家桐野作人のブログ  織田信長と島津氏・薩摩藩・幕末維新を中心に歴史にまつわる身辺雑記

 
図録島津義弘

鹿児島県姶良町(あいらちょう)の歴史民俗資料館が昨年、開館20周年記念の特別展を開催したときに作成された図録である。

姶良町には帖佐という地名がある。
文禄年間からしばらく島津義弘の居城だったところである。
兄龍伯(義久)が女婿忠恒に家督を譲ったのに伴い、義弘に鹿児島の内城を明け渡して、大隅の富隈に隠居することになる。
当時、義弘は栗野城を居城としていたが、島津家太守の居城たる内城に入れば、兄を追い払って後釜におさまるという印象を与えるのを避けて、「中宿」して、帖佐に留まった。その代わりに内城には三男忠恒を入れることで龍伯の了解を得る。

姶良町としては、義弘ゆかりの地として、帖佐を忘れてもらっては困るということで企画したものだろう。

この図録を見て、一番印象に残っているのは、図版、とくに2次にわたる高城合戦の絵図2種である。縮尺・距離・方位などが非常に正確な絵図である。両軍(島津VS大友、島津VS豊臣)の配置がよくわかるし、高城の縄張や陣城が非常にリアルで精細に描かれている。
所蔵先は日南市教育委員会だが、ここには飫肥がある。飫肥といえば、豊臣期から幕末まで伊東氏の所領だったところ。伊東氏は2次の高城合戦に参戦しているだけに、その関係者の手になるものだろうか。

図録のメインは、やはり義弘文書とその関係文書である。
国宝の島津家文書だけでなく、加治木島津家文書や加治木町郷土館所蔵文書まで50点以上の文書が写真版付きで収録されている。しかも、関ヶ原合戦前後のものが多い。同館渾身の企画だといえるだろう。
また「於岩釼御合戦之刻之事」という加治木町の新納家の記録も掲載されている。たしか『旧記雑録後編』でも見たことがある史料だ。

執筆者も豪華である。
三木靖氏「島津義弘の生涯」という解説を執筆しているほか、次の3人の論文も収録されている。

山本博文氏「島津義弘の賭け」
島津修久氏「島津義弘公と茶の湯について」
五味克夫氏「島津義弘の書状」


すべてを紹介しきれないが、とても豪華な図録である。
お値段もお手頃の1.500円(+送料)である。
詳しくは冒頭の同館サイトに問い合わせして下さい。
小為替(送料は切手可)でも注文できました。