この本は極めて問題あり。桐野の新出史料があるかと期待して購入したが、あにはからんや、羊頭狗肉も極まれりである。
わずか100頁の本が5000円もする。
値打ちのある中身なら、それでも合点がいく。
ところが、さにあらず。
100頁のうち、桐野の遺稿なるものはわずか35頁。
残りは「関係偉人略伝」で、ほとんど幕末の有名人の略伝である。それも、その辺の人物辞典に書かれている程度のもの。
そして、一番の問題は全体の3分の1しかない桐野遺稿なるものが初出ではないということだ。
一応、冒頭で、朝日書房刊『桐野利秋遺稿―憂国の至情』(昭和9年=1934)を底本にして、読みやすく編集した改訂版だとうたっている。
内容は、石川県士族である中村九郎と中村俊次郎が征韓論で下野した桐野との問答をまとめたもの。だが、朝日書房版よりずっと前にこの桐野遺稿とほぼ同じものが世に出ている。
それは、黒龍会編『西南記伝』上−1の附録に「桐野利秋の征韓論に関する実話」として収録されているもの。言い回しや語句がわずかに違うだけで、ほとんど同じ内容である。
私の持っている『西南記伝』は明治百年史叢書として原書房が復刻したものだが、黒龍会編の原本は1908年(明治41年)には刊行されている。朝日書房版がそもそも、その焼き直しに過ぎない。
復刻版とはいえ、わずか35頁を5.000円で売るのはあこぎではあるまいか。
私の周辺ですでに買われた方もおいでかもしれない。その方には高い授業料でしたねというしかない。
これから買おうかと迷っておられる方には、止めたほうがいいですと、アドバイスしておきます。
あえて、表題に×印を付けておきます。
私も中身を見ないでネットで購入してしまったのが悔やまれます。