歴史作家桐野作人のブログ                                      織田信長と島津氏・薩摩藩・幕末維新を中心に歴史にまつわる身辺雑記
この間、多くの方々からご論著を頂戴した。
改めて御礼申し上げます。

いただいてから、だいぶ日にちが経ったものもあります。
ひとえに私の怠慢ゆえ、お許し下さい。

堀 新氏より
『織豊期王権論』 校倉書房 2011年2月

研究会仲間の畏友、堀さんがこれまで公表していた専論を体系的にまとめたもの。堀さんの研究の軌跡や問題意識がより一層明確になっており、個人的にも待望の新著である。
とくに序論の研究史整理は信長研究には必須の前提であり、私も折に触れ、読み返してみたい内容である。

タイトルにもなっている「織豊期王権」という概念提起は堀さんの研究活動のひとつの到達点だと感じている。
「王権論」は研究者の間では「超歴史的」とか非歴史学系の研究分野の概念だと考えられており不人気だが、堀さんはこれまでの研究史を踏まえつつ、中世・近世を貫く国家構造を「王権」論で把握することはそれほど唐突ではなく、むしろ「公武結合王権」としてとらえるほうが実態に即していることを強調している。
中近世における国家構造を何でも公武対立でとらえる傾向が依然強い。私はそれを実証を伴わない不毛な史観だと考えているので、その意味でも「王権論」はそうした傾向を克服する有力な概念装置ではないかと思われる。
堀さんはもちろん、「王権」概念についても緻密で高度な議論を展開しているが、小生の不勉強で咀嚼中である。

また、信長と官位、京都馬揃えと三職推任、勅命講和論、絹衣相論、平家物語と源平交替思想など、信長について必ず話題になる論点についても、個別の専論で実証的に論じており、興味深い。信長に関心を持ち始めた人は、これらの専論から入ればいいかもしれない。

ともあれ、織豊期研究の現状に一石を投じた意欲的な書である。


大西泰正氏より
「富川達安をめぐって―豊臣期宇喜多氏権力の一断面―」 『倉敷の歴史』2011年3月号
「花房秀成の来歴一端」 『戦国史研究』61号 2011年2月

近年、活況を呈する宇喜多氏研究の中心で活躍されている大西氏より論文2点頂戴した。
豊臣期宇喜多氏といえば、慶長4年(1599)の宇喜多騒動が有名で、それが秀家の権力のありようや豊臣政権との関係など多様な論点を含んでいる。
とりわけ、秀家と対立した一門や譜代重臣の動向も注目であり、大西氏は宇喜多氏権力の全容をとらえるためにも、これら一門・重臣たちの各論へと対象を広げつつあるように感じた。


天野忠幸氏より
①「戦国期における三好氏の堺支配をめぐって」 『堺市博物館報』30号 2011年3月
②史料紹介「荒木村重と織田政権」 『地域研究いたみ』40号 2011年3月
③「蜂須賀家政の徳島城築城をめぐって」 『戦国史研究』61号 2011年2月

三好氏研究で知られる天野氏より3点頂戴した。
①は、これまで堺=自治都市論が有名だったが、もはや過去の議論となりつつある。本稿では、環濠・堺代官(武家)・豪商など自治都市堺の表象ともいえるテーマに取り組んでいる。とくに三好氏の堺支配については詳しく論じており、新知見にも触れることができた。
②は荒木村重に関する史料紹介だが、尼崎城の位置づけが面白かった。しかも村重時代だけでなく、近世においても尼崎城の特殊な役割が感じられた。
③蜂須賀家政がなぜ徳島城を築いたかがわかる。


松田好史氏より
「大正期の常侍補弼と内大臣―新帝補弼から元老内大臣兼任方式へ―」 早稲田大学史学会編『史観』163冊 2010年

昨年暮れにいただいていたものです。紹介遅れてすみません。
松田さんは近代から昭和初期の天皇側近、とくに内大臣の役割などについて詳しく研究されている方。
昨年の甲東祭で知り合いました。先日も大久保利泰氏の講演会でおめにかかった。
まったくの専門外なので、論評する資格はないが、大正天皇期の補弼にあたる内大臣制度が実力のない公家から大山巌や松方正義などの元老クラスが任官したことにより、侍従長ほどの権限だった内大臣が無視できない政治力を発揮するようになる過程を跡づけている。
ポストはその任についた人によって権限が大きくもなり、小さくもなるということか。
これは当該期だけでなく、現代においても同様だろう。


川口素生氏より
『島津一族』 新紀元社 2011年4月

友人の作家川口氏より頂戴した。
タイトルのとおり、島津一族の名鑑的な本だが、鎌倉時代から明治維新後まで、主要な人物や家を網羅してある。支族(異姓分家)まで目配りしてあるのは好感がもてる。もっとも、個人的な好みだが、左からの横書きは読みにくいのが難。


吉満庄司氏より
『薩摩藩の奄美琉球侵攻四百年再考』 沖縄大学地域研究所編 芙蓉書房出版 2011年2月

吉満さんは以前、鹿児島県資料センター黎明館の学芸員だった人。
その後、異動で徳之島に赴任された。
一昨年、同島で表題のシンポジウムが開催され、吉満さんはシンポの司会を担当、私も参加し、久しぶりにお会いした。
そのときのシンポをまとめたものが本になり、お送りいただいた。
奄美在住の弓削政己が基調講演をされ、原口泉、金城正篤、高良倉吉、幸多勝弘といった徳之島、沖縄、鹿児島本土の著名な研究者がパネリストをつとめられた。
私のコメントも少しだけ入っている。
吉満さんは近年、鹿児島市に戻っており、また新しい交流ができそうな感じである。


西田 茂氏より
『北の遺跡、南の遺跡(1)』 私家版

高校時代のサークルの先輩である。
私は高校時代、部活が考古学部だった。当時、高校としては珍しい部だったと思う。
西田さんは私より4学年上で、夏休みの地元での発掘調査に大学生として参加し、いろいろ教えてもらった。
私は初心というか原点から道がはずれてしまったが、西田さんはずっと考古学一筋で、鹿児島から北海道に移り、財)北海道埋蔵文化財センターに長らく勤務。近年定年退職された。
本書は高校時代から定年まで40年以上の考古学人生を振り返ったもの。
当然、私の足跡と一部重なっているが、同じものを見たり聞いたりしたはずなのに、だいぶ思いは違っていたり、私が事実誤認している点があって、微笑ましかった。

ほかにもまだありますが、長くなったので、今日はこの辺で。

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【2011/05/08 20:31】 | 新刊
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おつかれさまでした
市野澤 永
こんばんわ。

お世話になります。
昨日は江戸川区立東葛西図書館での講演、お疲れ様でした。

昨日、お話しました
高槻市しろあと歴史館
春季特別展
「城下町高槻のはじまり-信長・秀吉・家康の戦略-」
会期:平成23年3月19日(土)~5月15日(日) 

図録は現金書留、もしくは定額小為替で500円(送料は切手で210円)でお願いしています。
カラーで26・27頁に掲載されています。
釈文は43頁です。
同展示の関連講座である5月11日に催された「特別展の古文書を読む」でも利用されています。
天正十三年九月でした・・・

高槻市しろあと歴史館のホームページ
http://www.city.takatsuki.osaka.jp/rekishi/shiroato/index.html

こちらは、読もうと思っています↓

【書名】消された秀吉の真実-徳川史観を越え-て
【著者】山本 博文・堀 新・曽根 勇二編
【価格】\2,940(税込)
【出版】柏書房
【ISBN】978-4-7601-3994-1
【発行】2011年6月

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この記事へのコメント
おつかれさまでした
こんばんわ。

お世話になります。
昨日は江戸川区立東葛西図書館での講演、お疲れ様でした。

昨日、お話しました
高槻市しろあと歴史館
春季特別展
「城下町高槻のはじまり-信長・秀吉・家康の戦略-」
会期:平成23年3月19日(土)~5月15日(日) 

図録は現金書留、もしくは定額小為替で500円(送料は切手で210円)でお願いしています。
カラーで26・27頁に掲載されています。
釈文は43頁です。
同展示の関連講座である5月11日に催された「特別展の古文書を読む」でも利用されています。
天正十三年九月でした・・・

高槻市しろあと歴史館のホームページ
http://www.city.takatsuki.osaka.jp/rekishi/shiroato/index.html

こちらは、読もうと思っています↓

【書名】消された秀吉の真実-徳川史観を越え-て
【著者】山本 博文・堀 新・曽根 勇二編
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【出版】柏書房
【ISBN】978-4-7601-3994-1
【発行】2011年6月
2011/05/23(Mon) 20:03 | URL  | 市野澤 永 #-[ 編集]
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