歴史作家桐野作人のブログ                                      織田信長と島津氏・薩摩藩・幕末維新を中心に歴史にまつわる身辺雑記
原田芳雄が亡くなったので、CS放送で追悼を兼ねた映画特集をやっている。昨日、たまたま表題の映画を放映していた。
原田の出演映画では一番人気。たしかに原田の男臭さが画面いっぱいにあふれている。

制作年は1974年。
私が学生時代で、場末の映画館でオールナイト何本立てかの一本として観た記憶がある。

モノクロ画像で、なかなか不気味な雰囲気が漂っていた。
とくに原田芳雄、石橋蓮司、松田優作が白粉を塗って「ええじゃないか」踊りに紛れ込むあたりは気色が悪かった覚えがある。
ただ、もう30年以上も前で、しかも深夜のオールナイトで半分寝ていたせいか、記憶がまだらになっている。
覚えているのは、中村半次郎を演じた役者が不気味だったこと。
よくわからなかったのは、龍馬と慎太郎を暗殺したのが誰だったかということ。中村配下の浪人や密偵だったようにも見えたが、中村自身は襲撃が空振りに終わっており、よくわからなかった。

そして今回改めてよく観てみたが、私のリテラシーの問題か、単に役者の顔を覚えられないだけの問題か、暗殺の実行犯たちが誰なのかまたわからなかった。

中村を演じていたのは外波山文明という渋い役者さんだというのはわかった。
またまったく記憶になかったが、大久保利通が出ていて、田村兄弟の末弟亮が演じており、ちょっとすがすがしい二枚目の大久保だった(笑)。ほかにも山谷初男が少し軽薄な岩倉具視を演じていたのも印象的。

改めて観てみて、70年代半ばという時代の空気を濃厚に感じた。
一時の高揚と熱気が去ったあとの気だるく白けた雰囲気が漂っていた。
それが龍馬自身を革命=討幕を懐疑し、ネグレクトする立場に立たせていたのだろう。

もっとも、龍馬暗殺の仕掛けは薩摩藩黒幕説の陳腐でありふれたもの。武力討幕を進める薩摩藩が大政奉還に肩入れする龍馬が邪魔になったので、密偵や浪人たちを使って付け狙う。
薩摩藩はあくまで黒幕だから、大久保もそのことを直接匂わさず、ただ、わざとらしいそぶりやニヒルな口許でそれを暗示させていた。
また慎太郎や陸援隊の連中も龍馬を付け狙うという設定も、あざとくて嘆息するばかり。

小道具では、やたら龍馬のブーツが強調され、護身用のピストルも銃身がやたら長いピースメーカーと思わせるもの。これって幕末期にはまだなかったはずだが……。

映画そのものはモノクロ画像を効果的に使って、これまでにない龍馬像を描いたという評価もあるが、史実寄りに観たら、故人には申し訳ないが、いささか鑑賞に堪えない。もっとも、黒木なら、自分が描きたい龍馬を描いたんだ、史実や時代考証なんてくそ食らえだというだろうけどね。

問題は、黒木和雄にそのような映画を撮らせ、またそのような龍馬像を造形させたものは何だったかということだ。
ひとつは明らかに「権力」や「革命」に食傷し否定的な時代風潮だが、もうひとつは薩摩黒幕説という陳腐で矛盾だらけのフィクションが多くの人々の脳裏に無意識に浸透していて、黒木も例外ではなく、逆にその布教者、煽動者になっているということだろう。

龍馬暗殺の真相は単純なはずなのに、一世紀近くかけて、なにゆえ小難しく複雑な深層にされてしまったのかなと感じる。
妄言多謝。

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【2011/08/20 18:15】 | 雑記
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