歴史作家桐野作人のブログ                                      織田信長と島津氏・薩摩藩・幕末維新を中心に歴史にまつわる身辺雑記
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昨年末にいただいたご論著です。
年末のドタバタに取り紛れ、紹介できなくて申し訳ありません。
記して御礼申し上げます。

千葉歴史学会中世史部会の12月例会に参加したとき、いただいたものです。

佐藤博信さんより
佐藤さんは千葉大学文学部の教授で、よく知られているように東国中世史がご専門。以下のようにたくさんいただきました。

佐藤博信編『中世東国史の総合的研究』 千葉大学大学院人文社会科学研究科 2011年
佐藤博信編『玉縄北条氏関係史料』 千葉大学文学部佐藤研究室 2010年
佐藤博信・坂井法曄「安房妙本寺文書の古文書学的研究―特に無記名文書の筆者特定について―」 『千葉大学人文社会科学研究』23号 2011年
「安房妙本寺門流の展開と日向―特に細島妙谷寺・本要寺をめぐって―」 記念特集『興風』23号 2011年
「安房妙本寺日我と蔵書―「曾我物語」「八雲抄」などをめぐって―」 千葉大学『人文研究』40号 2011年

たくさんいただいたなかで、法華宗関係は門外漢すぎてコメントできないが、冒頭の『中世東国史の総合的研究』所収の佐藤論文「古河公方文書に関する覚書―特に闕字・平出・台頭をめぐって―」に注目した。副題にもあるように、対象への敬意を表する闕字・平出・台頭が、既刊の諸史料集においてその差異を区別せず、せいぜい平出(敬意を表すべき言葉を改行して行冒頭にもってくること)も闕字処理して事足れりとしている現状に警告を発している。平出は闕字より厚礼であることから、両者を混同して表記することは要らぬ誤解、誤読を招きかねないと。
中世が重層的な身分制社会であることを考えると、当然の指摘であるが、従来、この点に関する研究者の問題意識が希薄であることを個人的にも感じていた。
私が遭遇した事例では、信長文書を集大成した『増訂織田信長文書の研究』がある。同書では平出・台頭どころか、闕字さえも無視しているのが現状である。こうしたやり方は信長に対して少なからぬ誤解を生む恐れがあると感じていた。
たとえば、よく知られた将軍義昭に対する信長の五カ条の条書は、同書釈文では闕字をすべて無視している。しかし、その写真版を見れば、実際は「公儀」「上意」「禁中」などに信長はちゃんと闕字を用いている。
この条書は信長による将軍権力の制限・義昭への圧迫と評されているが、釈文に闕字が表記されないことが、そうした評価を増幅している面はないのかと危惧している。
余談ながら、同条書についてはそうした評価を必ずしも否定するわけではないが、義昭と信長の連合政権において確認された一種の「契約」という面があり、両者の不仲や信長の圧力を強調するだけでは一面的ではないかと考えている。
同書は信長研究の必須文献だけに、こうした敬意表現が無視されているのはとても残念に思っている。


石渡洋平さんより
「戦国期香取社と地域権力―特に国分氏を中心に―」 『駒澤大学大学院史学論集』40号 2010年

石渡さんは駒澤大学禅文化博物館に勤務されている。
上記例会でお会いして、このご論考をいただいた。
下総一宮である香取社と千葉六党のひとつ国分氏との関係が戦国時代、どのように変化したかを考察したもの。とりわけ国分氏が惣領家で上位権力である千葉氏から一定の独自性、自律性をもった地域権力だと結論している。
関東の国人についてはまったく門外漢で、国分氏のこともほとんど知らなかったので拝読しただけだが、当論文の射程が文明から永禄期あたりなので、今後は天正期の後北条氏と国分氏の関わりを検討されるのだろうか。


宮島孝男さんより
『どげんする? 鹿児島』 南方新社 2011年

宮島さんは元地元TV局勤務のジャーナリストで、前の鹿児島県会議員。昨年惜しくも落選の憂き目にあったが、本書は再起をめざすべく、伊藤県政を厳しくチェックするとともに、自身の政治理念やビジョンを明らかにしたもの。
詳しくは版元のサイトであるここの新刊案内をご覧下さい。
宮島さんとは東京勤務時代からの付き合い。同年齢ということもあってウマが合い、また内輪の親睦会である「薩摩の会」でもよくご一緒した。
本書で注目したのは農業振興とともに文化振興についてだった。とくに人材育成や、県民に開かれた公共機関にするために、黎明館などの施設の開館時間の延長(とくに金・土)を他県の事例を取り上げながら提案しているのはもっともだと思った。
また西郷隆盛だけでなく、大久保利通を軸にした歴史文化観光メニューの考案を提起しているのも興味深く賛成である。大久保利通を歴史や観光の目玉にと主張する県内有識者はほとんどいないだけに貴重である。
宮島さんは以前から離島振興に熱心だった。その点、奄美諸島や種子屋久地方の章立てがなかったのが少し残念だった。
次回選挙は頑張って下さい。

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【2012/01/05 15:16】 | 信長
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滝野川
>たとえば、よく知られた将軍義昭に対する信長の五カ条の条書は・・(中略)・・両者の不仲や信長の圧力を強調するだけでは一面的ではないかと考えている。

こうした指摘がもっと一般読者の目に触れるようになれば、旧来の信長像も更に見直されるのでしょうね。

固定観念
桐野
滝野川さん

信長の評価に対しては、研究者にも抜きがたい固定観念がありますからね。一般の歴史ファンは推して知るべしです。
認識の変化はなかなか難しいでしょうね。

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コメント
この記事へのコメント
>たとえば、よく知られた将軍義昭に対する信長の五カ条の条書は・・(中略)・・両者の不仲や信長の圧力を強調するだけでは一面的ではないかと考えている。

こうした指摘がもっと一般読者の目に触れるようになれば、旧来の信長像も更に見直されるのでしょうね。
2012/01/14(Sat) 15:25 | URL  | 滝野川 #-[ 編集]
固定観念
滝野川さん

信長の評価に対しては、研究者にも抜きがたい固定観念がありますからね。一般の歴史ファンは推して知るべしです。
認識の変化はなかなか難しいでしょうね。
2012/01/16(Mon) 20:18 | URL  | 桐野 #hxjklqKc[ 編集]
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