膏肓記

歴史作家桐野作人のブログ  織田信長と島津氏・薩摩藩・幕末維新を中心に歴史にまつわる身辺雑記

 
原口清著作集2『王政復古への道』(岩田書院)が刊行された。

全巻予約は8掛という特典付きだったから有難い。
詳しくは岩田書院サイトへ。

この巻には孝明天皇の死因についての論考がある。もっとも、すでに既刊のものだが、再録されたものをもう一度じっくり読んでみたいと、前から楽しみにしていた。

とりあえず、目次の章を掲げておく。おそらくこれが収録された論文のタイトルだと思う。

禁門の変の一考察
孝明天皇と岩倉具視
孝明天皇の死因について
医学と歴史学
慶応三年前半期の政治情勢
明治太政官制成立の政治的背景
王政復古小考
王政復古と摂関体制小考
明治維新研究と私


このなかの論文は私もほとんどもっていた。
「孝明天皇の死因について」もむろん興味深い論文だが、「孝明天皇と岩倉具視」がその前提を考えるうえでなお面白い。原口氏が勤務先の大学紀要に執筆されたものだが、ものすごく長い論文だった記憶がある。

岩倉が孝明天皇に敬意を表していただけでなく(個人的動機としても暗殺はありえない)、孝明天皇の死去前後にいわゆる討幕派なるものは存在しないこと、当時の岩倉もまた討幕派ではなかったことを論証しており、孝明天皇=討幕の阻害物という既成観念がそもそもフィクションであり、成立しないことを明らかにしたものである。

岩倉の立場に関連して、最近の研究では、岩倉が近習小番だったことが明らかにされている。孝明天皇の最側近の一人なのである。詳しくはここです。
そうした天皇との濃密な関係や当時の主従観念からして、岩倉による暗殺など、まず考えにくい。
このように、別の視角からの研究によっても、孝明天皇の死に岩倉が関与するはずもなかったという見方が補強されつつある。

この著作集1もまだ読み切れていないので、じっくり読んでみたいが、なかなか時間がとれない。自分の関心のあるもの、自分の仕事との関連で読む必要に迫られているものを優先的に読んでいくしかないだろうな。

おそらく、リンク先のパルティア・ホースカラーさんのサイトで紹介されると思うから、そちらでまた勉強させていただこう。
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こんばんは
私も今月はじめに「もうすぐ刊行」ということで本書を紹介しましたが、ついに刊行されましたね。私も収録論文の多くを読んだことがありますが、また改めて読んでみたくなりますね。ご指摘のとおり、原口氏の論文にはかなり長いものがあるので、なかなか大変ですが。

「孝明天皇と岩倉具視」などで主張されている、孝明天皇死去の時点で岩倉は討幕派ではなかったという見解は、ほかの研究者にも結構受け継ますよね。もちろん、ほかの収録論文も多くの幕末研究者に影響を与えているので、刊行されたことを喜びたいですね。
2007/10/26(金) 20:59:05 | URL | パルティアホースカラー #-[ 編集]
有難うございます
パルティア・ホースカラーさん、こんばんは。

わざわざコメントいただき有難うございます。
何か、呼び出したうえに下駄を預けてしまった感じですみません。

ご指摘のとおり、原口氏の研究は後進の研究者に影響を与えていますね。
原口氏自身は、服部之総・羽仁五郎・遠山茂樹・井上清の4氏の影響を受けたと書いておられました。どれも錚々たる方々ですな。

最近の歴史評論691号に、

友田昌宏「幕末政治史研究の現状と課題」

という論文が収録されていました。
幕末維新史とくに政治史の研究現状が手際よくまとめてあったように思います。
そのなかで、近年、実証が格段に精緻になった反面、その後の時代との関係に注意が払われていないと指摘しています。
また、共同研究と人物研究も重要ではないかという提起もありました。

私も共同研究の必要性を感じています。
とりわけ、基礎研究上の便宜として、新しい『明治維新人名辞典』の刊行に取りかかってもらいたいと思います。
前作から30年近く経っています。その後の研究の蓄積によって、幕府系や草莽系の人物がたくさん発掘されていますし、できれば、新選組隊士なども含めて、より網羅的な人名辞典を作ってもらいたいものです。
2007/10/26(金) 23:23:03 | URL | 桐野 #hxjklqKc[ 編集]
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