歴史作家桐野作人のブログ                                      織田信長と島津氏・薩摩藩・幕末維新を中心に歴史にまつわる身辺雑記
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

小学館古文書塾「てらこや」特別講座第3回
「小松帯刀と幕末薩摩藩3」

昨夜、出講。
昼頃、猛烈な雷雨となる。果たして出講できるのかと気を揉んだが、夕方にはやんでよかった。

もう第3回である。
今回は前回に続いて、長州処分の行方を見ていく。
前回同様、小松書簡からは少し離れて、西郷吉之助の書簡や土方久元の『回天実記』、そして『越前藩小倉滞陣日記』などを読む。

とくに面白かったのは『越前藩~』.。
幕府の使者として広島にやって来た大目付永井尚志が、征長軍に向かって、「面縛・開城」の強硬論をぶつ。要するに、毛利父子に縄目の辱めを与えて、城下の盟という屈辱を味わせようというわけである。
この間、総督の徳川慶勝や参謀の西郷が岩国吉川家との間で周旋してことを台無しにするような意見だった。長州勢力の後退と弱体をみて、とたんに居丈高になる幕府の姿勢をよく示している。
永井のKYな意見に、尾張藩の困惑が目に見えるようだし、間に立った吉川経幹は「青醒」(あおざめ)る。

その永井に対して、西郷が冷静に説いて論破するところが圧巻。
越前藩の史料なので、とくに西郷を美化しているわけではない、客観的な史料である。

「面縛・開城というなら、周旋も談判も不要。さっさと戦端を開いて萩まで攻め込めばいいわけで、それができるなら苦労していない。藩主父子が辱めを受けるなら、家来たちが「死守」の覚悟を固めるのは当然で、そうなると、半年や一年かけても、戦争は終わりませんよ。そのうち、征長軍に加わった大名からも不平不満が出て、何が起こるかわからない。結局、幕府のご威光は地に堕ちますぞ。それでいいんですか」

西郷の説諭に永井は反論できず、結局、西郷に同意する。
このあたり、永井は役者の違いを見せつけられた感じ。
このときから3年後の慶応3年(1867)、西郷が討幕に俄然強気になるのも、永井が徳川慶喜の側近なら大したことはないと呑んでかかっていたのかもしれないし、慶喜がまた、わが家中に西郷・大久保に匹敵する人材がおるかと諮問すると、老中以下が沈黙したという逸話とどこかでつながっているような気がした。

もうひとつ、大事なのは長州処分のプロセス。
第1段階:藩主父子の謝罪、3家老・4参謀らの処断、山口城破却、五卿お預け
を達成した時点で、征長軍は解隊するという取り決めがなされる。
征長軍の役目はここまでで、その後、第2段階として、毛利家の家督問題や減封・国替処分などは「公辺」=幕府に任せるという2段階のプロセスが示されたことを見ていく。

問題は、この第2段階をめぐって、第2次征長戦争へと突入していくことになる。
そのときには、すでに薩長同盟が結ばれているわけだが、今回でも、薩摩藩の吉井幸輔・村田新八が長州藩諸隊代表の太田市之進・野村和作の嘆願書を越前藩に取り次ぐなど、長州藩への同情が高まっていることがうかがわれた。

一方、在京している小松帯刀は長州処分問題には部外者的な立場なので、その書簡にも見るべきところはとくになかったが、面白かったのは、天狗党の東上をめぐって、幕府門閥譜代層の一橋慶喜への嫌疑が強まっていることへの小松の意見表明。

幕府は長州勢力の弱体化に気を強くして、幕権拡大のため、朝幕協調主義をとる一会桑、とくに慶喜の罷免を目論む。そのために老中松前崇広が歩兵隊2000を率いて大津まで上り、慶喜に圧力をかける状況となる。
小松は、関東の幕府と京都の慶喜の対決となれば、俄然「薩は橋公に組」して「天下両立」を企てるも辞さずという態度を示す。そして「橋公と幕との争」は「「(幕府の)衰運の初め」と喝破する。
このあたり、幕府専制主義に対して、慶喜の存在がその防波堤になっているというのが、小松の認識で、それは薩摩藩の大方の見方だったと思われる。

しかし、第2次征長から四侯会議にかけて、慶喜の正体は幕権維持派であることを露呈し、薩摩藩は煮え湯を呑まされることになる。
小松の慶喜評価の変遷は大政奉還や討幕をめぐって重要なポイントだろう。

今回もレジュメが15枚と多かった。
そのため、また摘み残しがあった。
とくに残念だったのは、黒田清綱(黒田清輝の養父)書簡を読めなかったこと。
これはじつに面白いのだが、それを味わってもらえなかったのが心残り。
まあ、次回の楽しみということで。

よろしければ、下記をクリックして下さい。
人気ブログランキング
スポンサーサイト

【2008/08/06 09:13】 | てらこや
トラックバック(0) |

管理人のみ閲覧できます
-


コメントを閉じる▲
コメント
この記事へのコメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2008/08/09(Sat) 09:22 |   |  #[ 編集]
コメントを投稿
URL:

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。