歴史作家桐野作人のブログ                                      織田信長と島津氏・薩摩藩・幕末維新を中心に歴史にまつわる身辺雑記
南日本新聞連載「さつま人国誌」第138回
―薩摩潜伏の末、逮捕、護送―

連載が更新になりました。
同紙サイトのここをご覧になるか、左のリンク欄「さつま人国誌」をクリックして下さい。

今回は、明石掃部全登の息子、小三郎が薩摩に潜伏したのち、露顕して逮捕、護送された一件を書きました。
明石全登は有名な割によくわからない人物ですね。
ましてや、その子の履歴や消息などはなおさら不明です。
ただ、キリシタン信者の密告制度も功を奏してか、掃部の息子たちが次々と捕らえられました。
小三郎もその一人です。小三郎については、『旧記雑録後編五』に収められた家老伊勢貞昌らの書状にはっきりと名前が出てくるので間違いないところです。
そのほか、『薩藩旧伝集』には「左近」という名の呉服屋の手代になりすました掃部の息子が出てきます。
掃部の息子が2人も鹿児島に潜伏していた可能性はないとはいえませんが、名前が異なるとはいえ、やはり同一人物だと思われます。
もし同一人物だとすれば、カタリナ夫人(永俊尼)の御内者だったジョアン又左衛門がこの呉服屋の主人だったことになります。
その辺を突きつめる史料は残念ながら、いまのところ見つかっていません。

また、小三郎が無事に京都に送還されたのかどうか、そして処刑されたのかどうかも、調べたかぎりではわかりませんでした。
キリシタン殉難史料としては、レオン・パジェス『日本切支丹宗門史』上中下(岩波文庫)
幕府側史料としては、『徳川実紀』
ほかに『史料綜覧』などを見てみましたが、関連記事が見つかりませんでした。
『江戸幕府日記』(ゆまに書房)も見たほうがよかったかもしれませんが、手許にありません。

ほかに公家の日記を見るべきだったと、あとで思い出しました。
もっとも、寛永年間を書いた公家の日記って何がありましたっけ?
『国史大辞典』所収の「記録年表」は中世が中心で、織豊期までしか掲載されていないんですよね。
『孝亮宿禰日次記』はちょうど小三郎が送還された寛永11年(1634)まであるようですね。
あと、土御門泰重の日記はどうでしたっけ?
もしその時期の公家の日記をご存じの方がおいでならご教示下さいませ。

いずれにしろ、この一件は薩摩や島津家の特殊な性格を示しているように思います。
薩摩にはこれより先に、明石掃部や小三郎の主君である宇喜多秀家も落ちてきました。また有名なキリシタン大名である小西行長の旧臣たちも多数薩摩に逃れてきています。ほかにも、豊臣秀頼、真田幸村、後藤又兵衛らが落ちのびてきた伝承もあります。
島津家が西軍ながら生き残り、反徳川的な面を期待されていたこと、また薩摩が辺境の地で、大陸に海路が開かれているという地理的環境も大きいと思われます。
薩摩は流人や亡命者の歴史としても面白いですね。
中世まで遡って、懐良親王や大覚寺義昭なども書いてみたいですね。

次回はいよいよカタリナ夫人のことを書きたいと思います。

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【2010/02/16 10:19】 | さつま人国誌
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拝読させていただきました。
zeigen
明石小三郎の記事、興味深く拝読させていただきました。
明石掃部もそうですが、考え始めると、興味がどんどん湧いてきます。
勉強させていただきました。ありがとうございます。

明石氏
桐野
zeigenさん、こんばんは。

コメント有難うございます。
専門家に読んでいただくのは恐悦至極です(汗)。
私も一応「吉備温故秘録」など備前関係史料を見たのですが、あまり有益な情報は見当たりませんでした。
大名クラスの家なのに不思議ですね。
今後ともご教示のほどお願いします。

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コメント
この記事へのコメント
拝読させていただきました。
明石小三郎の記事、興味深く拝読させていただきました。
明石掃部もそうですが、考え始めると、興味がどんどん湧いてきます。
勉強させていただきました。ありがとうございます。
2010/02/16(Tue) 22:15 | URL  | zeigen #-[ 編集]
明石氏
zeigenさん、こんばんは。

コメント有難うございます。
専門家に読んでいただくのは恐悦至極です(汗)。
私も一応「吉備温故秘録」など備前関係史料を見たのですが、あまり有益な情報は見当たりませんでした。
大名クラスの家なのに不思議ですね。
今後ともご教示のほどお願いします。
2010/02/16(Tue) 23:29 | URL  | 桐野 #hxjklqKc[ 編集]
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