歴史作家桐野作人のブログ                                      織田信長と島津氏・薩摩藩・幕末維新を中心に歴史にまつわる身辺雑記
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第41回「さらば高杉晋作」

高杉が他界したわけですが、長州ではなぜか高杉だけが龍馬の理解者です。
高杉の描き方についても、書きたいことがないわけではないですが、面倒なのでスルーです。

相変わらず、龍馬は大政奉還一本やりですねえ。
木戸孝允とも対立しているように描かれています。
しかし、木戸と龍馬はこの年、慶応3年(1867)9月まで、武力討幕でピタリと息を合わせていることが、その往復書簡で明らかなんですけどね。

とくに有名なのが、木戸が龍馬に宛てた9月4日付書簡。
武力討幕を「狂言」とか「芝居」と隠語で表現し、「乾頭取」(板垣退助)と「西吉座元」(西郷隆盛)とが「狂言喰ひ違ひ」がないよう息をぴったり合わせることが大事だ、つまり薩土の討幕派の連携が重要だと、龍馬に忠告しています。

一方の龍馬もその返信(9月20日付)で、「大芝居の一件」は面白くてよくわかった、自分も「憤発」すると答えています。そして、武力討幕のための小銃1000挺購入して土佐に運び込み、板垣らに引き渡すこと。それと同時に後藤象二郎を更迭させ、土佐か長崎に帰すことを告げています。さらに、「薩土及云云」(当年6月の西郷らと板垣・中岡らの薩土討幕密約)に従って、本国土佐を救うと述べています。
つまり、龍馬は木戸や西郷や板垣と協力する、バリバリの武力討幕派なのですよ。

龍馬のこの考えと行動の背後にあるのは、この頃、薩摩藩の主導で進行していた薩長芸三藩挙兵計画であり、龍馬は土佐もこれに乗り遅れてはいけないという危機意識から、小銃1000挺を購入して土佐に運び込むという行動に出たわけです。

これのどこを叩いたら、龍馬が大政奉還一本やりの不戦平和論者という評価になるのか、理解に苦しみますね。
余計なお世話かもしれませんが、これに限らず、基本的な史実無視や史実背反がドラマの流れに不自然さを生み、そのぎこちない龍馬像が視聴者に違和感を与え、視聴率低迷の一因になっているのではないかと憶測しているのですが、どうなんでしょうかね?

龍馬の理解者とされる高杉が死に、大政奉還の舞台には長州藩が直接関わることはできませんから、龍馬の考え方に反対する木戸も関与できない。となると、龍馬の大政奉還に反対する勢力ないし人物は誰か、もう決まったようなものですね。その線で近江屋事件になだれ込むのでしょう。ドラマ終盤になって、なぜ大久保利通が登場してくるかも、この文脈からよく理解できます。

以上のようなことについて、2回講座をやります。
「龍馬暗殺―近江屋事件の背景と真相―」と題したものです。
詳しくはここをご覧下さい。


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【2010/10/10 23:08】 | 龍馬伝
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忍っこ
桐野先生こんにちは
今年、龍馬伝が始まった時こんなことを言ってましたね
土佐藩の上士と下士の対立について、
福山龍馬は「憎しみからは何も生まれない」と
そしてなんと高杉晋作が大政奉還の理解者?
どれだけいい人なんでしょう
逆に憎しみ以外になにがあるのかと問いたいです。
あいも変わらず史実無視してますね


164go
龍馬さん、いい人すぎですよね。
いつも事件に巻き込まれ、その中心にいるけど、
それを運と実力で円満に解決してしまう。
黄門さまと同じ感じがしてきました。

大型娯楽時代劇『水戸黄門』と同じくして観るべきでしょうかね。


丸義
桐野先生、お早う御座います。
先生のブログが大変勉強になっております。

史実の龍馬とドラマの龍馬の、あまりにも大きな違い・・・
これでは、視聴者が違和感を持つのも仕方ないと思います。
龍馬の魅力が全く伝わってきません。
いくら「ドラマ」といえど、脚本に力が無さ過ぎて残念です。


憎しみだけでなく
桐野
忍っこさん

「憎しみからは何も生まれない」……ありましたねえ。
当時の時代世相を考えれば、迷文句でしょうね。

もっとも、明治維新は「憎しみ」だけでなく、「理念」や「ビジョン」もあったと思います。

高杉については、大政奉還より半年前に亡くなりますから、どうとでも描けるということでしょうね。
それは創作としてはありだと思いますが、それならば、木戸と高杉はそんなに意見が違うはずがないという反論もただちにできますけどね。

なお、前回のドラマでいえば、慶応3年はじめ、木戸などが明確に討幕を考えていたかどうかは不明です。そこまでの構想と決意はまだなかったと思います。
長州は何より藩主父子の復権と藩の名誉回復が最大の課題でしたから。

水戸黄門との違い
桐野
164goさん

「龍馬伝」と「水戸黄門」の対比ですか。
なかなかユニークなことをお考えになりますね。

でも、私は次の一点において、「龍馬伝」は「水戸黄門」と同じではないと思います。
それは時代考証の有無です。

ドラマ「水戸黄門」は、誰でも創作だという前提で見ています。ですから、時代考証も置いていません。

ところが、「龍馬伝」はじめ大河ドラマは時代考証がいます。
この点、むしろ反作用が大きいと思います。つまり、時代考証がいるから、ほとんど史実なんだろうと視聴者に思わせてしまいます。
その「刷り込み」の有無が大きいのではと思います。

史実以前の問題も
桐野
丸義さん

私も同じような感想をもちます。
今年のドラマは、史実と脚本家の創作が全然かみ合わず、不自然で流れが悪いですね。
要は史実どおりに作ったほうがなんぼかましだと思います。

まあ、史実といっても、解釈が分かれるところがありますから難しいのですが、それを踏まえながらも、納得できる筋書きをひねり出すのが脚本家の腕だと思いますけど、去年も今年もダメなんなんじゃないですか。

あの時代、武力なき不戦平和主義者がいるなんて、だいだい嘘くさいし、空々しい限りですよね。これは制作する側の見識や歴史観の問題です。私はその一点です。




猿山
 龍馬伝のノベライズ版が、すでにNHK出版から刊行されています。それで見る限り、「黒幕」は存在しなかったことにされています。龍馬は普通に、今井、佐々木らに暗殺される。ただそれだけです。

 その前段で、西郷が中岡に「坂本さんを生かしておいたのは間違いじゃった」などと語らせたり、用もないのに近藤勇が出てきて「坂本は生かしておけん」などと語らせたり、いかにも黒幕説につながりそうな、思わせぶりな布石を打っているのですが、最後まで読んでみたらまったくの拍子抜けです。
 もちろん、黒幕説を採らなきゃいけないわけではありませんし、安直な黒幕説は興ざめなだけですが、あれだけプロデューサだかなんだかが「黒幕説」をほのめかしておきながら、このザマです。
 視聴者は、あのプロデューサーに一杯くらわされたというわけですね。

 もちろん、収録の土壇場で脚本を変えてしまい、ドラマの本編は黒幕説で撮影した、という可能性はありますが、まあ常識的には考えられないでしょう。

 繰り替えしますが、龍馬伝の結末、黒幕説ではありあませんでした。

ゲタを預けた?
桐野
猿山さん

ノベライズの結末紹介有難うございます。
ネタバレ気味ですが(笑)。

もしノベライズに忠実にドラマが制作されるならと仮定しての話ですが、辛うじて「此岸」に踏み止まったといったところでしょうか。「彼岸」が何を意味するか、あえて申しませんが。

150年前の明治維新が、そして龍馬や西郷や木戸が、手厳しい歴史の評価に晒されるように、大河ドラマ「龍馬伝」も同様です。
10年後、20年後にどのように評価されるのか、語り継がれるだけのものを描けるのか、そのあたりに思いを致せば、興味本位の黒幕説はとれない、あえて見解を示さず、視聴者に判断のゲタを預けるという趣向でしょうか?


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この記事へのコメント
桐野先生こんにちは
今年、龍馬伝が始まった時こんなことを言ってましたね
土佐藩の上士と下士の対立について、
福山龍馬は「憎しみからは何も生まれない」と
そしてなんと高杉晋作が大政奉還の理解者?
どれだけいい人なんでしょう
逆に憎しみ以外になにがあるのかと問いたいです。
あいも変わらず史実無視してますね
2010/10/11(Mon) 13:38 | URL  | 忍っこ #-[ 編集]
龍馬さん、いい人すぎですよね。
いつも事件に巻き込まれ、その中心にいるけど、
それを運と実力で円満に解決してしまう。
黄門さまと同じ感じがしてきました。

大型娯楽時代劇『水戸黄門』と同じくして観るべきでしょうかね。
2010/10/11(Mon) 21:05 | URL  | 164go #fzZwSRbU[ 編集]
桐野先生、お早う御座います。
先生のブログが大変勉強になっております。

史実の龍馬とドラマの龍馬の、あまりにも大きな違い・・・
これでは、視聴者が違和感を持つのも仕方ないと思います。
龍馬の魅力が全く伝わってきません。
いくら「ドラマ」といえど、脚本に力が無さ過ぎて残念です。
2010/10/12(Tue) 07:36 | URL  | 丸義 #x0g92yAY[ 編集]
憎しみだけでなく
忍っこさん

「憎しみからは何も生まれない」……ありましたねえ。
当時の時代世相を考えれば、迷文句でしょうね。

もっとも、明治維新は「憎しみ」だけでなく、「理念」や「ビジョン」もあったと思います。

高杉については、大政奉還より半年前に亡くなりますから、どうとでも描けるということでしょうね。
それは創作としてはありだと思いますが、それならば、木戸と高杉はそんなに意見が違うはずがないという反論もただちにできますけどね。

なお、前回のドラマでいえば、慶応3年はじめ、木戸などが明確に討幕を考えていたかどうかは不明です。そこまでの構想と決意はまだなかったと思います。
長州は何より藩主父子の復権と藩の名誉回復が最大の課題でしたから。
2010/10/13(Wed) 17:49 | URL  | 桐野 #hxjklqKc[ 編集]
水戸黄門との違い
164goさん

「龍馬伝」と「水戸黄門」の対比ですか。
なかなかユニークなことをお考えになりますね。

でも、私は次の一点において、「龍馬伝」は「水戸黄門」と同じではないと思います。
それは時代考証の有無です。

ドラマ「水戸黄門」は、誰でも創作だという前提で見ています。ですから、時代考証も置いていません。

ところが、「龍馬伝」はじめ大河ドラマは時代考証がいます。
この点、むしろ反作用が大きいと思います。つまり、時代考証がいるから、ほとんど史実なんだろうと視聴者に思わせてしまいます。
その「刷り込み」の有無が大きいのではと思います。
2010/10/13(Wed) 17:55 | URL  | 桐野 #hxjklqKc[ 編集]
史実以前の問題も
丸義さん

私も同じような感想をもちます。
今年のドラマは、史実と脚本家の創作が全然かみ合わず、不自然で流れが悪いですね。
要は史実どおりに作ったほうがなんぼかましだと思います。

まあ、史実といっても、解釈が分かれるところがありますから難しいのですが、それを踏まえながらも、納得できる筋書きをひねり出すのが脚本家の腕だと思いますけど、去年も今年もダメなんなんじゃないですか。

あの時代、武力なき不戦平和主義者がいるなんて、だいだい嘘くさいし、空々しい限りですよね。これは制作する側の見識や歴史観の問題です。私はその一点です。

2010/10/13(Wed) 18:00 | URL  | 桐野 #hxjklqKc[ 編集]
 龍馬伝のノベライズ版が、すでにNHK出版から刊行されています。それで見る限り、「黒幕」は存在しなかったことにされています。龍馬は普通に、今井、佐々木らに暗殺される。ただそれだけです。

 その前段で、西郷が中岡に「坂本さんを生かしておいたのは間違いじゃった」などと語らせたり、用もないのに近藤勇が出てきて「坂本は生かしておけん」などと語らせたり、いかにも黒幕説につながりそうな、思わせぶりな布石を打っているのですが、最後まで読んでみたらまったくの拍子抜けです。
 もちろん、黒幕説を採らなきゃいけないわけではありませんし、安直な黒幕説は興ざめなだけですが、あれだけプロデューサだかなんだかが「黒幕説」をほのめかしておきながら、このザマです。
 視聴者は、あのプロデューサーに一杯くらわされたというわけですね。

 もちろん、収録の土壇場で脚本を変えてしまい、ドラマの本編は黒幕説で撮影した、という可能性はありますが、まあ常識的には考えられないでしょう。

 繰り替えしますが、龍馬伝の結末、黒幕説ではありあませんでした。
2010/10/15(Fri) 15:52 | URL  | 猿山 #-[ 編集]
ゲタを預けた?
猿山さん

ノベライズの結末紹介有難うございます。
ネタバレ気味ですが(笑)。

もしノベライズに忠実にドラマが制作されるならと仮定しての話ですが、辛うじて「此岸」に踏み止まったといったところでしょうか。「彼岸」が何を意味するか、あえて申しませんが。

150年前の明治維新が、そして龍馬や西郷や木戸が、手厳しい歴史の評価に晒されるように、大河ドラマ「龍馬伝」も同様です。
10年後、20年後にどのように評価されるのか、語り継がれるだけのものを描けるのか、そのあたりに思いを致せば、興味本位の黒幕説はとれない、あえて見解を示さず、視聴者に判断のゲタを預けるという趣向でしょうか?
2010/10/16(Sat) 00:03 | URL  | 桐野 #hxjklqKc[ 編集]
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昨日もなんとか8ページ入稿してから、1日遅れで『龍馬伝』を更新します。 今回は高杉晋作との死別を描いたため、肝心の弥太郎のほうがかすれてしまいました。 やっと土佐商会と海援隊結成で龍馬との絡みが史実だというのに。 それはともかく弥太郎に亀山社中のツケを回さ
2010/10/11(Mon) 21:09:24 |  shugoroの日記
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