歴史作家桐野作人のブログ                                      織田信長と島津氏・薩摩藩・幕末維新を中心に歴史にまつわる身辺雑記
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昨日の感想はあっさり書きすぎたので、少し補足しておきます。
というか、正面から感想を書いたら、そのスタイルとクオリティを維持しなければならなくなるので、本音をいうと、あっさり流したスタイルにしたいのです。聞くところによれば、ドラマでは家康の伊賀越えに江が同行するそうです。脱力するしかありません。ですから、いちいち目くじらを立てていたら、きりがありませんので。

読者の方からも疑問、質問があったので、いくつか補足しておきます。
お市がらみです。

まずお市の出自というか,信長との系譜的な関係について。
確実な一次史料はなく、編纂史料によるものですが。

以貴小伝
信長のいとこだったが、長政には妹として披露した

織田系図
信長のいとこの娘

浅井三代記
「信長卿の御妹おいち(市)殿を娘分になされ」

このあたりは拙稿「お市と濃姫」(『信長公記を読む』堀新編、吉川弘文館、2009年)でも少し書きました。

このように史料では、お市の方が信長の妹だったかどうか、見解が分かれていますが、注目すべきはやはり婚家の家伝『浅井三代記』でしょうね。
信長は妹のお市の方を養女として、浅井長政に嫁がせたとあります。
これが確実だとすれば、信長は長政の舅になるわけで、その力関係は明らかです。織田と浅井の関係はこの婚姻を媒介にして、浅井方の従属的な同盟として結ばれたと見てよいでしょう。
それなのに、浅井が信長から離反し、朝倉方に付いたのは、やはり浅井家中で構造変化が起きたのでしょうね。長政の地位低下か心変わりか、久政の復権か、家中で親朝倉派の勢力が増大したか、いろいろ考えられそうですね。

なお、福田千鶴さんの『江の生涯』(中公新書)には、信長の妹のお市を「娘分」として嫁がせたと書かれ、その出典を『信長公記』としていますが、何か勘違いではないでしょうか。上記で見たように、『浅井三代記』です。

次にお市と長政の婚姻時期ですが、これは難しいですね。
古くは、奥野高廣氏が永禄10年(1567)末か、翌11年初めとして通説になっていました。信長の上洛戦に伴う浅井氏との同盟という見方です。
近年、小和田哲男氏も奥野説を踏襲しています。

一方、宮島敬一氏は近年、永禄2年(1559)以降で、遅くとも同6年を下らないという説を明らかにしています(人物叢書『浅井氏三代』)。これも興味深いですね。上限が同2年というのは、長政(当時、賢政)が六角義賢方から娶った先妻を離縁しているのが理由でしょう。
とくに永禄4年がポイントかもしれません。この年、長政は賢政名乗りを捨てて、長政と改名します。これは信長からの一字拝領ではないかという見方を最初に示したのは『東浅井郡志』です。信長が舅だとすれば、ありうる話ですね。
友人で長浜歴史博物館の太田浩司氏も宮島説とほぼ同様で、永禄4年説をとっています。

なお、付け加えると、長政は改名後(永禄4年、6年、7年と諸説あり)、美濃に侵攻し、斎藤義龍と戦っています。これは信長の要請があった可能性が考えられます。つまり、この時点ですでに織田と浅井の同盟が成立しており、その媒介はお市の輿入れとも考えられます。

このように、お市の輿入れを、永禄10~11年とするか、同4年前後とするかで、まったく同盟の性格が変わってきます。
これは同時に、長政の子どもたちの生母が誰かとも関わるでしょう。
三姉妹はお市が生母ですが、秀吉によって処刑された万福丸の生母は誰かということにもなります。
ドラマはお市と長政の「純愛」を描いたため、三姉妹の兄にあたる万福丸が出てきませんでした。これは脚本家というか、時代考証担当の小和田さんが万福丸は側室の子どもだと考えているのが反映されたからでしょう。
(ちなみに、昔の大河では万福丸の処刑場面とかありましたけどね。歴史のリアリティへの感度が低くなっていると感じるのは私だけでしょうか?)

でも、永禄4年前後説をとれば、万福丸がお市の子どもだった可能性も排除できなくなりますね。
このあたりの解釈は、史料不足もあって難しいです。

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【2011/01/10 12:52】 |
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トラバ星人@コバンザメ
ぶるぼん
桐野先生
「青春18」のオマヌケ旅行で更新が遅くなりましたが、
今年もコバンザメ商法でしつこくトラバ貼らせていただきます。
本当、本が売れない時代に突入してしまいましたが、
少しでも宣伝になればと思います。
本年もよろしくお願いします。

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桐野
ぶるぼんさん

トラックバックでまたお付き合いですね。
本というかムックもなかなか売れませんか。
今回は少し責任を感じています……。


忍っこ
桐野先生今年もよろしくお願いします
大河ドラマ「江」始まりましたね
ドラマなんだから史実から外れてもいい云々
という意見もあるようですが
私はそうは思わないんですね
たとえば子供たちが見て間違った知識が頭に
入ってしまうと言うことですよね
昨年の例を言いますと
龍馬が容堂公と面会している場面を見たら
信じてしまう子供たちもいるでしょう
私はドラマ冒頭にフィクションも含まれています
と入れるべきかと思います。
ここ数年の大河は史実無視のやりたい放題で
桐野先生のブログでのご教示
大変ありがたく思います。

フィクションのさじ加減
桐野
忍っこさん

ご丁寧なコメント痛み入ります。
最近の大河ドラマは、民放が年末年始にやっている予算をかけた長時間の時代劇とほとんど同じテイストになっていますね。薄味です(笑)。

とにかく史実の基本線だけでも堅持してくれたらいいですが、今年もまたダメでしょうね。
昔の大河ドラマが懐かしいです。







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この記事へのコメント
トラバ星人@コバンザメ
桐野先生
「青春18」のオマヌケ旅行で更新が遅くなりましたが、
今年もコバンザメ商法でしつこくトラバ貼らせていただきます。
本当、本が売れない時代に突入してしまいましたが、
少しでも宣伝になればと思います。
本年もよろしくお願いします。
2011/01/11(Tue) 13:44 | URL  | ぶるぼん #41Gd1xPo[ 編集]
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ぶるぼんさん

トラックバックでまたお付き合いですね。
本というかムックもなかなか売れませんか。
今回は少し責任を感じています……。
2011/01/11(Tue) 22:58 | URL  | 桐野 #hxjklqKc[ 編集]
桐野先生今年もよろしくお願いします
大河ドラマ「江」始まりましたね
ドラマなんだから史実から外れてもいい云々
という意見もあるようですが
私はそうは思わないんですね
たとえば子供たちが見て間違った知識が頭に
入ってしまうと言うことですよね
昨年の例を言いますと
龍馬が容堂公と面会している場面を見たら
信じてしまう子供たちもいるでしょう
私はドラマ冒頭にフィクションも含まれています
と入れるべきかと思います。
ここ数年の大河は史実無視のやりたい放題で
桐野先生のブログでのご教示
大変ありがたく思います。
2011/01/12(Wed) 05:57 | URL  | 忍っこ #-[ 編集]
フィクションのさじ加減
忍っこさん

ご丁寧なコメント痛み入ります。
最近の大河ドラマは、民放が年末年始にやっている予算をかけた長時間の時代劇とほとんど同じテイストになっていますね。薄味です(笑)。

とにかく史実の基本線だけでも堅持してくれたらいいですが、今年もまたダメでしょうね。
昔の大河ドラマが懐かしいです。





2011/01/13(Thu) 21:58 | URL  | 桐野 #hxjklqKc[ 編集]
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